■三国志旅行記>成都4日目・5日目 2006年2月23日・24日
■「イヌが人語を喋る」 ぼくはあの日、日本人という名の珍獣でした。同時に半日間だけ、日本代表になってたのかも。一緒に旅した成都の15人には、日本人=ひろおみたいな奴ら、というイメージが固まったっぽい・・・みなさんゴメン・・・   ■美肌の国 成都発の、中国人向けの国内ツアーに参加した。朝の7時にホテルのフロアに集合して、都江堰(秦代に治水に成功して国が豊かになった)や青城山(道教の聖地)を見に行った。   中国の古典で、ジョーク?として「この土地のイヌは、太陽を見たら咆える。それくらいいつも曇っていて太陽が珍しい」と言われてる。ぼくが行った日も、ずっと幻想的な霧・霧雨でした。歩いてると、いつのまにか、しっとり肌からしたたってた。   ■日本人は写真に写るな ガイドさんには「日本人が一人ツアーに混ざります。中国語は解りませんが、漢字を見せれば意味を解します」と伝わってる。 でも他の15人ほどのツアー客には、それは伝わってないはず。 ツアーに参加した初対面の中国同士が友達になっていく中で、ぼくは黙って列の後ろに従っていくだけだった。基本的な旅行会話は出来ても、下手に話してマシンガンで返されると、何も解らん。   「景色の鑑賞に言葉は不要」 「廟や展示物の解説なら、辛うじて読める」 そう割り切って、無言を決め込んでた。   大きな石段で集合写真を撮ろうということになり、みんながヒナ壇に並んだ。ぼくも、まあ、同じツアーの参加者なのだし、当り障りなく適当に混ざっとこうと思ったら、横から肩を押された。何を言われてるのか解らないけど、「出ろ」ということ? そのあと、大きな山河をバックに記念撮影をしたとき、今度は明確に「出て行け」と押しやられた。ガイドさんがカメラを構え、客の全員が列を組んで、ぼくは距離をおいて、誰とも目をあわさないようにウロウロ。こんな疎外感ひさびさ笑   ■日本人はここで「さよなら」 食事のときに、あの回転テーブルで一緒に食事を取ったのだけど、ぼくが箸を普通に使いこなしたら、隣に座ってたおばさんが目を剥いた。日本も箸文化なのよ。彼らは日本人を見たことがない。 その席で「日本人なのか」と、さらにあちこちから聞かれた。「そうです」と答えてそこから会話に移るんだけど、一問一答の領域を越えると答えられない。「すみません、聞き取れません」を連発。   食事後にバスの外で休憩してたら、中国人たちに「日本人はここに置いていこう。日本人はここで『さよなら』だ」と言われた。さよなら、の部分は彼らなりの日本語です。ぼくらが「ニーハオ」くらいなら知ってるみたいに、「さよなら」は普及してるらしい笑 戸惑ってたんだけど、まあ旅行社の人に言われたわけじゃないし、耐え忍んでバスに乗り込んだよ。そしたら「日本人は『さよなら』と言っただろう」と言われて、バスの中で一同そろって大哄笑。   元SPEEDのHITOEが「海外で腹が立ったら、自国語で怒ればいい」なんていうのも思い出しながら、ここで日本語でまくし立てたら、余計に浮いて馬鹿にされるのでは?と思ったから、沈黙を保ったよ。 「どういう種類の冗談か知らんけど、お前らいい加減にせえや」なんて怒鳴ったら、確かに怒気だけは伝わるんだろうけど・・・ツアーはまだ半分。ここで派手に孤立するのは得策じゃない。   ■少数民族?のおばあちゃん 2人乗りのゴンドラで老子を拝みにいったんだけど、1人きりのぼくは、一緒に乗る人がいない。すぐ後ろに、いい年したバカップルのツアー客がいたんだけど、彼らは別々になる&ぼくと座るのを嫌って、後ろの方に並んでたおばあさん(ツアー客じゃない)をぼくの隣にあてがった。   空飛ぶ椅子で2人きり、丸くて背の高い黒い帽子をかぶったおばあさんと、よく解らない会話をすることに笑。結った白髪が帽子の後ろから見えてて、すごく独特な感じ。 会話にならず「高いなあ」「怖いなあ」「雨ですねえ」みたいな話しかしなかった。あとは笑っとくだけ。おばあさんが持ってる花を指して「これは何という花ですか」と聞いたけど、発音は真似れても漢字は解らず。   ■漢字が解ることは奇跡? 道教の聖地から下山するとき、ガイドさんがマップに「3時半までにココに降りてきてね。こっちの道は行ってはダメです」と書いてくれた。ありがたい配慮です。 それを他の客が見つけて「あなたはこの地図が理解できるのか」と聞いてきた。「できますよ」と返す。1つ1つ観光スポットを指差して、これは?これは?と聞かれた。「解ります」漢字はお手の物?だし、中国語読みを知らない地名はあるけど、マップとしてなら読めるもん。   ■質問攻めなり 下山で、この日初めての個別行動になったら、一人二人とぼくのところにやってきて、根掘り葉掘り聞かれた! 「日本から来たのか」「どうやって来たのか」「どれくらい時間がかかった」「いくらかかった」「中国のことは好きか」「留学で来たのか」「中国に来るのは何度目か」「いつ来て、いつ帰るのか」「中国ではどこを訪問したのか」 ちょちょちょ、ちょっと待って。心なしか怖いし笑   さらに質問は個人的なことに及び、 「名前は何というのか」「中国語に翻訳すると何と呼べばいいのか」「何歳か」「兄弟はいるのか、何をしてるのか」「両親はなぜ中国に来ていないのか」「仕事は何か、働いてるのか」「どこの学生なのか」「中国語は、どこでどれくらい学んだのか」 これにとどまらず、 「日本円を見せてもらえないか」と言われ、「ちょっと待って下さい」と言って、リュックに封印してた100円玉や1円玉を出すと、大喜びされて「人民元のいくらに相当するのか」と。   戸惑って質問を受け付け?てると、お兄さんが「びびりなさんな、みんな日本のことに興味があるんだよ」と。 集団では小石を投げてきた人たちが、一対一の個人になると、急に駆け寄ってきて興味を示してくれる。国家って化けものやね笑   ■イヌが人語を喋る 当日のぼくの変なモテっぷりは、こんな風に想像してください。 もし飼ってるイヌが喋り始めたら、聞きたいことがいっぱいあるじゃん。「視界は本当に白黒なの?」「鼻が人間の1億倍利くなら、めっちゃ臭いものを嗅いだら気絶するのか」「ドッグフードを美味しいと感じてるのか」「人間をどう思ってるのか」「夢は見るのか」とか、あれこれ質問しちゃうでしょ。 それと同じ。   言葉がおぼつかない&別の生き物だから邪険にしてたけど、ゆっくり話してみると、意外にいろいろ理解した。こりゃ面白いよ?という中国人客たちの態度でした。   「日本語を喋って」って言われたから、めちゃめちゃ早口で適当なことを口走ったら、周りが珍しいものをみたように大喜び!「なんて言ってるか解らなかったよ」って言われたけど、そりゃそうっしょ。ときどき日本人にも同じことを言われるから笑   ■日本語講座「銀杏は背が高い」 前を歩いてるおじさんに「急がずにゆっくり降りなさいよ」と何回か注意された。ぼくがコケたら、おじさんまで被害を食らうわけで。あとから判明したんだが、そのおじさんこそ転び魔でした笑   山道の木に「銀杏」と書かれていて、おじさんが「あれは銀杏(イーンxx)です」って教えてくれた。ぼくがびっくりして「日本でも同じ漢字を書くんです!『いちょう』と発音します」と伝えた。 するとおじさんは他の客に「あの木は『いちゃょう』と言うんだよお!」と教えて騒いでる。   次に木を指差して、そのまま上にやり、「これをどうやって日本語で言うのか」と聞いてきた。細長いとか、高さがある、とか、そういう意味の日本語を聞いてるのでしょう。 適当な言葉が解らん! 仕方なくて「背が高い」と教えておく笑。応用も利くしね! そしたらおじさんは「『いちゃぉうは、せげたかぇぁい』」って言ってる。「おお、上手です。そんな感じです!」って褒めておいた。   他の木の名を聞かれたんだけど、ぼくは樹木の名前なんて詳しくないんだってば。「知りません。きっと日本にこの木は生えてないんですね」なんてハッタリをかましといた!   ■注意=チュウイィ=ちゅうい 「小心飛石(シャオシンフェイシィ)」という看板があった。日本語で言うなら「落石注意」ってとこ。 おじさんが「小心を日本語ではなんて言うのか」と聞かれたので、「『注意(ちゅうい)』と言います」と答えたら、「いやいや、それは中国語でしょ、日本語では何というの?」と聞き返された。 そうでした。 注意は、中国語でチュウイィと言うから、発音が似てるのだった!偶然を見つけて、ちょっと盛り上がった!   ■英語を話すのはインテリ 中国の本屋には、日本と同じように、英語の教材がたくさん並んでる。英語は話せたらカッコいいけど、一般的には誰もが苦手。そういう言語事情は、中国も日本も同じらしい。 ホテルや駅でも、片言隻句の英語スピーカーはいるけど、ぼくが安心して英語で会話(の真似事)をしようとすると、「それは無理やから」と言われる。   日本の昔話でネズミの穴に入った悪いお爺さんが、ネコの鳴き真似をしたらネズミが退散、一人で暗闇に取り残される!ってのがあるでしょ。成都で英語を喋るのはそれに似ていて、日本語を使おうものなら、何を言う前から拒絶される。 協力を仰ぎたいなら、中国語+沈黙が必須条件やね。   ■英語は国際語ではナイ笑 ツアーに一人、英語を使える女の子がいました。おそらく同年代。ぼくが困ると、彼女が英語で通訳をしてれた。 しかし彼女も、英語はそれほど上手くない。彼女が英語で言えるくらいのことなら、ぼくが中国語で言えてしまう笑   だれでも母国語って得意だから、守備範囲が広いと思うんよ。例えば旅行者風の外国人に「どこはエクでしか?」と街で聞かれたら、日本人なら「どこが駅ですか」だろうな~と推測できる(はず)。 ぼくの母国語は日本語で、彼女は中国語。日本語なまりの英語(子音の言い切りが苦手で、エルとアールが混ざる)と、中国語なまりの英語(濁音が苦手で、抑揚が不自然)は、いまいち溶け合わない。 互いに守備範囲の狭い英語を付き合せてるより、ぼくが無理やりでも中国語を喋ったほうが、まだマシだった笑   でも、苦手なりに英語で話しかけてくれた、気持ちが嬉しかったね!   ■人生初のあの台詞 彼女が「Nice to meet you」って言ってくれたので、「見面〔イ尓〕我hen高興」って同じ意味の中国語で答えたら、すごく喜んでもらった。「私たちは朋友だ」って言い合った。 その子は他の人に「友達になったんだよ」って触れ回って、写真も一緒に撮ることに。中国の内陸に、ぼくの名前と顔写真が残ってしまったよ。 別のお兄さんには「いくつだ」と聞かれたから「23です」「じゃあオレが兄貴だな」と言われ、肩を組んで写真を撮りました。   日本人同士で「お会いできまして大変光栄に存じます」とは言うけど、やはり建前の部分が大きい。本当に会えて嬉しいなら、そんなこと言わないじゃん。「友達になろう」も、恋愛のやんわり拒絶文句にしかならない笑 中学以来「会えて嬉しい」って表現を語学クラスで習うたびに「いつ使うんだよ、馬鹿らしい」と冷笑してたぼくです。でも、この時ばかりは、この表現を知っててよかったよ。   ■南京大虐殺を知っているか 下山して、例の鬼門である集合写真になったら「ひろお、なぜ写真に入らないの?こっちおいで」と言ってもらって、真ん中に押されました。 さっきまで阻害されてたのは、日本人だから?それとも、ただ無言の暗いヤツってことで、混ぜてもらえなかっただけ?顔は同系統だから、自分からアピらないと、中国語が出来ないことは伝わらないしね。   丸くなって喋ってたら、急に円が割れて、1対残り全員になった。そして彼らが早口で打ち合わせ?をした後、こう言われた。「nanjingda××shaを知っているか」と。 南京(nanjing)は地名として知ってたから、すぐに聞き取れた。観光の話でも振られたのかと思ったけど、どうも雰囲気が怪しい。次の「da」は「大」で、次の音は聞き取れなくて、最後の「sha」は「殺」だったはず。「南京大×殺」から推測して・・・思い至ったよ。   その話題が来たのか、という気持ちで、自然に顔が歪んだ。その表情を見て「彼は知っているらしい」と数人がつぶやいた。ぼくの中国語も追いついて「知ってます」。さらに数人が頷いて、何だか安心した表情を作ってた。立ち話の円は、ぱらぱらとバラけた。   ぼくの本音は「歴史学的には実証されてない、規模や存在についても検討の余地がある案件、外交のカードにされたキライのある問題、として知っている」です。でもここで発言するのは不適切だし、幸いに語彙がない! 何と言っていいのか解らず、精一杯の言葉を振り絞っても「対不起」くらいしか出てこない。 原意は「申し訳なくて会わせる顔がありません」って言葉だけど、今では店員さんに水を頼むときにも使って「ちょっとゴメンよ」というニュアンスも含む。 ・・・黙っといた。   ■お茶の実演販売 一行はとあるホテルに通されて、目の前で何種類ものお茶をいれてもらって、振舞われた。アクションが派手で独特で面白い! 誰か一人がはじめに飲んで感想を言う、という役回りだったんだが、一同に推されてぼくがやることに。 南京大虐殺は、「初めて見た日本人の若者が知っていた」というだけで、彼らなりには合格だったっぽい。もし(苦手な受験科目として、イデオロギも何も関係なく)例の事件を忘れていたり、もう少し中国語の発音に疎かったりしたら、ヤバかったって苦笑   「お茶、どうですか」と聞かれても、「うまい」「あまい」「あつい」くらいしか語彙がありませんってば笑。横で英語の使える子がサポートしてくれて、「香りがいい」を覚えた。   自分のためにお茶葉を1つ買ったんだけど、そこでさっき実演してくれたお姉さんに話しかけられて「私の説明はわかりましたか」と聞かれ、「いいえ。解りませんでしたわ、あっはっは」「いいですよ~文化交流ですからね」なんて冗談を言い合ってきた。   ■利己的なひとびと 成都市内にバスが戻ったら、渋滞に巻き込まれた。 信号を無視って6車線くらいから車が殺到するから、タテとヨコが無数に絡み合って、交差点で1時間半以上動けない。こんな感じ! →→→→↓↓ →→↑↓←← →↑↑←←↓ ↑→→↓←←   誰かが待ってあげないと、渋滞はぼくれない。でも1回待って、交差方向の車を入れてあげると、その車が動くまでは自分が動けない。その車が動くためには・・・考えるのもイヤ。だから、がんがん車体を押し込んできて、権利を主張する。 さっきまで幽玄な道教の聖地で「道(タオ)」「無為(ウゥウェイ)」なんて気持ちに浸ってきたのに、クラクションがパッパー!運転手たちが出てきてガヤガヤ!   ■中国でも名前を間違えられる ぼくの名前は「大朗」なんだけど、ホテルのフロントで「太朗」って書かれた。どうでもいいけど、一応指摘してみた。 ちゃんと「我的名字的漢字不是太、是大」って言えばいいものを、「ぼくは太くありません、大きいです」みたいな片言を披露してしまった。エレベーター待ちのとき、フロントでお姉さんたちがぼくの口真似をして笑いあってるのを聞いてしまい、恥。。恥。。 野次は文が単純だから、いつも聞き取れるの。不思議ねえ。   彼女たちにしてみたら「キリンさんも好きです、でもゾウさんのほうがも~っと好きです」みたいな台詞を、成人男子が大マジメに喋ってるのと同じようなものだもの。おそらく。   ■中国5日目「抜けない中国語」(おまけ) 朝飯はホテルの「二楼」つまり2階のはずなのに、ホテルが改装中でたどり着けない。フロントで案内を頼んだら、エレベータで3階に連れて行かれた。 イギリス?では1階を「グランドフロア」と呼んで、階の数え方が日本とズレるんだっけ。中国もイギリスと同じで特殊なのか?と思ったら、普通に階段を1つ降りた。工事の都合で、3階からしか、2階のレストランに行けなかっただけらしい。はっ。。精神と時の部屋かよ!   関西国際空港から、うっかり南海電車に乗った。 周囲の日本語の雑談が、中国語に聞こえる。全然聞き取れない。国際空港からの電車だから、たまに本当の中国語が混ざってたりして、余計にパニック。 駅名のアナウンス「はごろも」の音質が悪くて、「はおろも」になってたんだが、それが「好了〔口馬〕ハオラマ?」に聞こえた。「これでいいですか?」という念を押す文句で、これを言われたら目を皿のようにして、予約や商品をチェックしてたっけ。ぴりっと緊張してしまったよ。     旅行記に長いことお付き合いくださいまして、ありがとうございました。 ほんとに読むのしんどかったと思うんですけど・・・感謝です!
トップ>三国志旅行記>成都4・5日目 inserted by FC2 system