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(C)2007-2009 ひろお
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魏呉蜀の天命を検証する 1)天命とは何か
天と人がシンクロすると、統一王朝が生まれるらしい。

◆天と人の感応とは
劉秀(後漢の光武帝)が即位するときに、盛んに利用したことでポピュラーになった思想に、天人感応というのがある。
平たく言えば、天に指名された人が皇帝となり、中国大陸を治めることができるのだ。
ここでは「天」という言葉に代表させてあるが、人為ではどうにもならない普遍的な真理を、漠然と指したものだろう。べつに「神」と言い換えても、根っこがブレることはなかろう。
ぼくは大学時代に、日本の戦国時代に確立した「天道思想」についての論文をいろいろ読んだ。「天」の用法は、同じ文脈なんだろうね。

◆統一は不自然
日本で生まれ育ったぼくから見ると、いつも疑問だった。
「中国はなぜあんなに広いのに、1つの王朝が統一できたんだろう」
こんな問いが生まれる背景には、
「1つの国にまとまるなら、日本くらいの大きさが精一杯だ」
という思い込みがある。
これが正しいのかそうでないのかは分からない。でも、世界の歴史の平均から見ると、中国はやはり大きい。ヨーロッパみたいに分割している方が馴染む。
前回、「三国時代は分裂期ではない」という文を書いた。そこで見たことには、中国の全土統一はフィクションで、実現可能なのは、せいぜい州の大きさに近い文化圏の集合だと。州1つなら、日本やヨーロッパの1国に近い面積で、均質に治められそうな気がする。

気候や食べ物が違うと、人の集団は分かれるのが普通だ。人がどれだけ「1つの国だ」と強迫して念じても、分かれるものは分かれる。広大な土地がまずあって、その上に人がいる。この順序は変わらない。政治が生まれるのは、さらにその後だ。この順序も変わらない。
だから郡国の割拠が、自然な状態だ。
もし生活圏の異なる集団を強制的に結びつけるなら、それこそ不自然であり、ぼくの感覚からすれば「天命」に反する。天命は、中国大陸を分けたがる。劉秀を初め、歴代の皇帝が使ってきた用法とは逆の結論を導いてしまったが、それがぼくにとっての真理だ。

◆努力の分限
病気になったとする。手当てなんかしても無駄だと開き直る人がいる。医者にかかる人がいる。
『三国志』の群雄に置き換えるなら、前者は世が乱れるままに放置する人。後者は、せめて1州の秩序だけでも回復しようと、努力をする人。後者の方が、何らかの価値を作り出せそうだ。
同じようなを例えを、もう1つ。
身近な人が死んだとする。死を受け入れる人がいる。死体をどうにか組み立てて、生命を復活させようとする人がいる。
『三国志』の群雄に置き換えるなら、前者は自分の器量の限界を知り、立場相応に振舞う人。後者は、どんな手を使ってでも全土統一を達成しようとする人。晩年の諸葛亮なんかがこれに当たるだろう。

死者を蘇生させる黒魔術は、自然の流れに逆らっている。
いくら努力する姿勢が立派で、その生き様が誰かの心を打っても、人としてできることの限界を弁えていないのだから、精神異常の匂いすら漂ってくる。
3世紀の時点で「中国大陸を1つにまとめる」というのは、聞こえはいいものの、非現実的な話だ。生産力とか輸送技術とか通信手段とか、もろもろの事情が整っていない。それでも統一に妄執するなら、「愛しい人とは、永遠に愛し合えるべきだ」を貫こうとする黒魔術と同じいかがわしさがあると、ぼくは思う。

天命を知るとは、努力して到達できる場所を、過不足なく見極めることだろう。努力しても全てが適わないからと言って、腐ってはいけない。また、目標をわざと甘く見積もってもダメ。
だから人が生きることは、実に難しすぎるのだが、、
『三国志』を後世の人として読み返すことができるぼくは、群雄たちの適切なゴールを知ることができる。すなわち、州の1つをキッチリ長く治めきることが、人智の及ぶ適度な難易度のテーマじゃなかろうか。

◆中原の特性
今までは大雑把に捉えるために、収まりの良い領土の規模は、1州だと書いてきた。
でも中原は、三国時代までの歴史も厚くて、1つの文化圏を細分化させて州が設置されている。 中原は、并州と冀州(河北)、司隷と豫州と兗州(河南)、青州と徐州(東海)の3つくらいに分ければ、大きさがちょうど良いだろうか。
だから、
魏は治めている州の数が多すぎるから、存在そのものが道理に合わない。天命に逆らっている」
なんてことは言いません(笑)

次から、各国の天命について見ていきます。
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このコンテンツの目次
魏呉蜀の天命を検証する
1)天命とは何か
2)諸葛亮の抱えた矛盾
3)呉は皇帝になってはダメ
4)魏は天命を実現した
5)天命を無視した晋
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