読書 > 李卓吾本『三国演義』第62回の訓読

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第62回上_劉玄徳 楊懐・高沛を斬る

孟達・黄権が、第61回に出てこない。孫権の話になっちゃうから。今回は、1つ飛ばして、第62回を先に訓読する。

孫権が、劉備・劉璋を対立させる

張昭 計を献じて日く、
「且に兵を要動するを休めよ。若し一たび師を興さば、曹操 必ず再び至らん。如かず、書を二封修め、一封を劉璋に与え、『劉備 東呉と結連して西川に下らんと欲す』と言へ。劉璋をして備を相疑し、内外より攻撃せしめよ。一封を張魯に与へ、進兵して荊州に向はしめよ。二処〈劉備と劉璋〉を間諜せしめば、劉備 首尾 救応する能はず。則ち起兵して之を取る事 諧〈かな〉ふ可し」
権 之に従ひ、即ち使を二処にす。

却説 玄徳 葭萌関に在り、日は久し。民心 甚だ順ふ。曹操の興兵して濡須を犯すを知り、龐統と与に議して曰く、
「曹操 孫権を撃つ。操 勝てば則ち、就ち荊州を取る。権 勝てば、亦 荊州を取る。当に如何すべし」
龐統曰く、「主公 憂ふ勿れ。軍師 諸葛亮有り、智足り謀多く、東呉をして敢へて荊州を犯さざらしむを料想す。主公 書を劉璋の処に移す可し。只だ曹操 孫権を攻撃するを推せ。
『権 救を荊州に求む。吾と孫権とは唇歯の邦なり。唇 亡べば則ち、歯 寒し。張魯 自守の賊なり。决して敢へて界を犯さず。吾 今 兵を勒して荊州に回り、孫権と共に約会し、曹操を同破せんとす。奈何せん、兵は少なく糧は欠く・望むらくは、同宗の故を以て、速やかに精兵の三四万を発し、糧十万斛を行ひ、軍器を段疋せよ。星夜 発付し、前来せよ。悞有ること勿きを請ふ。若し軍馬・銭糧を得れば、却りて別に商議を作さん』と〈いう内容の手紙を劉璋に送れ〉」と。
玄徳 之に従ひ、人を遣はして成都に往かしむ。

劉備の要求を、劉璋がはねる

〈劉備が〉関前に来到するや、楊懐・高沛 此の事を聴知し、遂に高沛をして関を守らしめ、楊懐一同 使者として成都に入りて劉璋に見ひ、書信を呈上す。
劉璋 楊懐に問ふ。
「何の為に来たるか」
楊懐曰く、「専ら此の書の為に来る。劉備 自ら入川して従り、恩徳を広布し、以て民心を收む。此の人の意、甚だ是れ善からず。今 軍馬・銭糧を求む。切に与す可からず。如若し相助すれば、乾柴を抱きて烈火の上にあるに似る。難を急とし滅ぶなり」
劉璋曰く、
「吾 玄徳と弟兄の情を与にす。廃す可からず」

まだ言ってたのかw


一人 昂然として出でて曰く、
「劉備 梟雄の人なり。若し久しく蜀中に留めて之を去らしめざれば、是れ縦ままに虎に室に入らしむなり。
今 更に之を助くるに軍馬・銭糧を以てすれば、是れ虎狼に羽翼を添ふ。切に之を允す可からず」
衆人 之を視るに、乃ち零陵の烝陽の人なり。姓は劉、名は巴、字は子初。此の人 近く交趾自り蜀中に転入す。
階下の黄権 又 諌む。劉璋 遂に允量し、才弱の軍の四千・米一万斛を撥す。段五千匹の軍器・車仗を彩り、少し許り発す。

黄権の諌めが認められたが、一瞬だけの登場だった。

使者 去きて劉備に報ず。
劉巴 伝令して急ぎ楊懐・高沛をして、関隘を緊守せしむ。使者 先に楊懐と別れ、葭萌関に回到し、玄徳に来見し、其れ此の事を言ふ。随後、糧を送りて至る。
玄徳 大怒して曰く、
「吾 汝の為に敵〈張魯〉を破り、力を費し心を労す。汝 今 財を積み賞を吝しむ。何を以て士大夫をして死戦せしむや」
遂に回書を扯毀し、大罵して起つ。
使者 連夜、成都に逃回す。

龐統が蜀取りの3策を提案

龐統曰く、「主公 只 仁義を以て重しと為す。今 其の意 如何」
玄徳曰く、「此の如し。当に若何すべき」
龐統曰く、「某 三條の計策有り。願ふ、主公 自ら擇びて行へ。只、今 便ち選精兵を有び、昼夜兼道し、成都を逕襲すること一挙なり。便ち是れ此を上計と為す。
楊懐・高沛乃 蜀中の名将なり。各々強兵を仗し関隘を拒守す。今 主公、佯〈いつは〉りて以て荊州に還るを名と為せば。二将 聞知し、必ず相送す。就ち送行する処 擒へて之を殺し、関を得て、涪城を先取す。然る後、成都に却向す。此れ中計なり。
白帝に退還し、夜を連ねて荊州に回り、徐に進取を図る。此れ下計と為す。
若し沉吟して去らざれば、将に大困に至らんとす。久かる可からず」
玄徳曰く、「軍師の上計は太だ促たり。下計は太だ緩たり。中計は遅からず疾からず、以て之を行なふ可し」
統曰く、「主公 書辞を劉璋に作り、虚言せよ。『曹操 部将の楽進をして兵を引き青泥鎮に至る、弟の関羽ら抵敵して住まらず。吾 当に親自ら去助すべし。面会に及ばず、特書もて相ひ辞す』と。人をして成都に入らしめ、報知せよ」

張松の最期

却説 張松 劉玄徳 荊州に回ると説くを聴得し、只 真を道ふとし〈事実だと信じてしまい〉、書一封を修めて、却りて人をして玄徳に送らんとす。正に値るに、親兄たる広漢太守の張粛 松に到りるや、急に書を袖中に蔵し、粛と与に相ひ陪説して話す。
粛 松に只だ開調の意有るを見て、酒を索めて之を飲ましむ。酒 半酣に至り、松と兄の張粛と献酬すること交錯す。忽ち此の書を地に落つ。粛の従人 拾得す。須臾、席 散ず。従人 書を以て粛に呈す。粛 開きて之を視る。書に曰く、

「松 頓首・端拝す。主君 皇叔の麾下、昨より常に、進言して、並せて虚謬無し。何ぞ遅きこと太甚なる。逆取・順守は、古之の貴ぶ所なり。今 大事 已に掌握の中に在り。何故、此を棄てて荊州に回らんと欲するや。松をして之を聞かしむ。如し失する所有れば、書 呈して日に到る。疾速に進兵し、以て王業を図れ。幸甚、松 稽首・再拝」

なんの中身もない、ただの催促である。


張粛 見て大驚して曰く、
「吾が弟 滅門の事を作す。首せざる可からず」
夜を連ね書を将て劉璋に見ひ、「弟の張松 劉備と与に同謀し、西川を献ぜんと欲す」と説く。
劉璋 大怒して曰く、
「吾 平生 仁義を以て人を待す。誰か想はん、此の如きを」
遂に令を下し、張松の全家を捉へ、尽く市に斬る。
後人 詩有りて嘆じて曰く、
「一覧無余自古稀誰知書信泄天機未観玄徳興王業、先向成都血染衣」

黄権が劉備との対決を勧める

劉璋 張松の全家を斬り、文武に商議して曰く、
「劉備 吾の基業を奪はんと欲す。当に之を如何すべき」
黄権曰く、
事 宜しく遅かるべからず。即ち便ち人を差はし、各処の関隘に告報し、兵を添へて守把し、並せて荊州の一人一騎とも入関するを許放するなかれ

劉備vs高沛・楊懐がせまる

却説 玄徳 兵を提げて涪城に回る。先に探馬せしめ、関上に来報して曰く、
「吾 荊州に回る。来日 徑過す。楊・高の二人に請ふ、相別せんことを」

却説 楊懐・高沛の二将 関上に在り、劉玄徳 人をして来報せしめ、明日、経過するを聴得す。一面に相見するを求めんと欲す。楊懐曰く、
「玄徳 此れ回るは若何」
沛曰く、「玄徳 死に合す。我等 先に利刀を送行の処に蔵し、之を剌せ。以て吾が主の患を絶たん」
懐曰く、「此の計 大妙なり」
二人 只 随行の二百人を帯び、其の余を遠く送る。並せて関上に留在せしむ。

玄徳の大軍 尽く発前し、涪水の上に至る。
龐統 馬上にて玄徳に曰く、
「楊懐・高沛 若し欣然として来たれば、之を隄防す可し。若し是れ来らずんば、便ち起兵して其の関を逕取せよ。遅緩す可からず」
正説の間、忽起と旋風 吹き、馬前の「帥」字旗を倒す。玄徳 龐統に問ふ。
統曰く、「此れ警報なり。楊懐・高沛の二人、必ず主公を剌すの心有り。兵を整へて之を禦ぐ可し」
玄徳 身に重鎧を披て、自ら宝剣を佩く。

忽ち報ず、楊・高の二将、前来して送行すと。玄徳 軍馬をして歇定せしむ。龐統 魏延・黄忠の二人を分付し、但だ関上より来る軍士は、馬歩・軍兵の多少なるを問はず、一箇 休放して回る。
二将 令を得て、遠遠自り散去す。

楊懐・高沛をだまして捕らえる

却説 楊懐・高沛の二人 身辺に各々利刀を蔵し、二百の軍兵を帯び、羊を撁きて送る。酒直 中軍に至る。並せて〈劉備軍に、楊懐らの暗殺を警戒する〉准備無きを見る。心中 暗かに喜び、以て計を中つと為す。
二将 下馬して玄徳に見ふ。正 龐統と帳中に坐す。
二将 声喏して曰く、
「今 聞く、皇叔 遠回すと。特に薄礼を具へ、相ひ送る」
遂に酒を進めて以て玄徳に勧む。
玄徳曰く、「二将軍 関を守ること、易からず。当に先に此の盃を飲め」と。
二将 酒を飲み畢はる。
玄徳曰く、
「吾 密事有り、二将と与に商議せん。人を閑じ退避せしめよ」
手下の二百人 尽く中軍を赶出す。
玄徳 叱りて曰く、
「左右 吾と与に捉下せよ」と。
帳後の劉封・関平 来りて二人を捉す。 楊・高 急待し、爭闘す。劉封・関平 各々一人を捉下し、階を下らしむ。
玄徳 喝して曰く、
「吾 劉璋と是れ同宗の兄弟なり。汝二人、何故に同謀して、親情を間諜するや」
龐統 大喝し、之を搜す〈訊問した〉。
劉封 二将の身畔に各々利刀の二口を搜出す。
玄徳 終に慈心有り、之を殺すに忍びず。
龐統 色を作して曰く、
二人の本意 吾が主を殺さんと欲す。罪 誅を容れず。推出し、之を斬れ。」と。
刀斧手 即ち楊懐・高沛を帳前に斬らんとす。
一声もて黄忠・魏延に号令し、尽く二百の従人を将ゐ、先に自ら捉下す。曽て一個も走らず。
玄徳 喚入し、各々酒を賜らんとするに、圧驚す。
玄徳曰く、「楊懐・高沛 吾が弟兄〈劉璋と劉備〉を間諜し、又 利刀を蔵し、剌を行なふ。是れ誰ぞ。礼無く已に誅戮を行なふ。罪 你らに在らず。命ず、皆 之を恕せ」と。
衆 各々拝謝す。
龐統曰く、「今夜 汝らを用て路帯を引き、吾軍 関を取る。各々重賞有り」と。
衆 皆 応允す。

是の夜、教高・楊の二百人 関下に引至し、叫びて曰く、
二将軍 急事有りて回る。速やかに関を開く可し」
城上 是を聴き、自家の軍なれば、即時、関を開く。軍士一擁して入る。兵 刀を血せず、涪城を得たり。大軍 遂に蜀に入る。兵 皆 降る。
玄徳 各々重賞を加へ、随即ち前後に分兵して守把せしむ。

劉備と龐統が宴席でケンカする

次日、軍を労ひ宴を涪城に設く。公廳に玄徳 酒を帯びて龐統を顧みて曰く、
「今日の会 楽しと為す可きや」
龐統曰く、「人の国を伐ちて、以て楽と為すは、仁者の兵に非ず」

出ました!名言、頂きました。

玄徳 大怒して曰く、
「吾聞く、昔日 武王 紂を伐つ前、歌ひて後に舞ふ。此れ亦 仁者の兵に非ざるや。吾聴く、汝の言 道理に合はず。速やかに退く可し」

龐統 之を聞き、全く懼色無く、大笑して起つ。左右 亦 玄徳を扶けて入堂せしむ。睡ること四更に至る。
酒 醒む。左右 逐ひて龐統の言を以てて玄徳に告ぐ。玄徳 懊悔すること及ぶ無し。急ぎ衣を穿き、堂に陞り、請ふ。
龐統曰く、「昨、酒に酔ふに因り、公に觸る。幸にも掛懐ある勿し」
龐統 談笑し、自若たり。
玄徳曰く、「昨日の言、惟だ吾 失有り」
龐統曰く、「君臣 俱に失す。何ぞ独り主公なるや

また名言、いただきました!

玄徳 大笑して共に楽しむこと初の如し。

却説 敗兵 連夜、成都に走回し、劉璋に報ず。
璋 大驚して曰く、
「料らず、今日 果して此の事有るを」
遂に文武を喚び、退兵の策を問ふ。衆将 斉しく出でて曰く、
「某ら願はくは、往きて夜を連ね、起兵して以て雒県の塞に屯し、咽喉の路に住まらんことを。劉備 精兵・猛将有ると雖も、過ぐ能はず」と。
遂に劉璝・冷苞・張任・鄧賢を差遣はし、五万の大軍を點し、星の夜、起発して進み、雒県を守りて、以て劉を雒県に拒み、将に起兵せんとす。勝負は如何。下回便見。141020

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第62回下_黄忠・魏延 大いに功を争ふ(作成中)

後日やります。
今日は、孟達の登場シーンだけ。

却説 玄徳 黄忠・魏延をして、各々一寨を守らしむ。涪城に回りて自り、軍師の龐統と商議す。
細作 報説す、
「東呉の孫権 人を遣はして東川の張魯と結搆す。将に葭萌関に来攻せんと欲す」と。
玄徳 驚きて曰く、「若し葭萌 失なふ有れば、後路を截断せらる。吾 進退すること得ず。当に之を如何とすべき」
龐統 孟達を喚びて曰く、
汝 蜀中の人なり。多く地理を知る。

孟達の地図だけじゃ、足りなかったのか。

却りて去き、葭萌関を守ること如何」
達曰く、「某 一人を保つ。広く漢書に通じ、深く民心を知る。某と同に関を守すれば、万にも一失無からん」
玄徳 問ふ、「何なる人や」
達曰く、「荊州に在りしとき、曽て劉表 中郎将と為す。南郡の枝江の人、姓は霍、名は峻、字は仲邈なり」

なぜ孟達が霍峻をもちだすのだろう。正史では、荊州時代から劉備に仕えているが、『三国演義』では、孟達の人脈として登場する。
孫権と張魯が結ぶなんて、どうせ実現しない。この記事が、ここに置かれているのは、まったくのランダムだろう。だいたい、この辺りにしとけば、問題なかろう?くらいの。前後の記事も、関係なかったし。
とりあえず、霍峻伝も読んでおこう。

玄徳 大喜し、遂に即時、孟達・霍峻を遣はし、葭萌関を守らしむ。141020

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