読書 > 李卓吾本『三国演義』第14回の訓読

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第14回上_鑾輿を遷し、曹操 秉政す

天子が洛陽に帰ってくる

李楽 軍をして詐りて呼〈さけ〉ばしむ。
「李傕・郭汜の軍 到る」と。 兵卒 皆 驚く。
楊奉曰く、「此れ乃ち李楽 詐りて呼ぶなり」
遂に徐晃をして之に出迎しめ、李楽に正逢す。両馬 相交すること只一合、徐晃の一斧に、李楽 馬下に砍らる。余党を殺散し、車駕を保護し、得て箕関を過ぐ。

太守の張楊 糧食・絹帛を将て天子を軹道に迎ふ。帝 張楊を封じて大司馬と為す。楊 辞す。
帝 野王に屯兵す。帝 洛陽に入り、宮室は焼尽し、街市は荒蕪するを見る。目を満たすは、皆 蒿草なり。宮院中 只 頽墻・壊壁有るのみ。

洛陽の荒廃の描写でした。

小宮に旋蓋し、帝・后に住坐せしむ。百官 朝賀するに、皆 荊棘の中に立つ。是の歳、大荒す。勅して興平を改めて建安元年と為す。

洛陽の居民 僅かに数百家有り、食と為す可きもの無し。尽く城中に去き、樹皮を剝ぎ草根を掘り、之を食ふ。
尚書郎より以下、皆ら自ら出城して樵採す。多く墻壁の間に死する者有り。漢末の気運 衰敗すること、此よりも甚しき無し。
前賢 詩一首有りて以て世情を歎ず。詩に曰く(はぶく)

太尉の楊彪 奏ず。
「帝 前に降を蒙り、詔 未だ曽て発遣せず。今 曹操に山東に在り、屯兵すること数十万、入朝せよと宣して、以て王室を輔け、主を佐けしむ可し」
帝曰く、「朕 躬ら既巳に詔を降す。卿 何ぞ必ず再び奏す。即便ち人を差はし前去せしむ」

夏侯惇が天子を守る

却説 曹操 山東に在り聞知す、車駕 巳に洛陽に還るを。謀士を聚めて商議す。荀彧 進みて曰く、
「昔日 晋文公 周襄王を納れて諸侯 義従す。漢高祖 義帝の為に縞素して天下 帰心す。今 天子 蒙塵す。将軍 首めに義兵を倡へ、徒 山東の擾乱 未だ遑ならざるを以て、金鑾を走赴せよ。
今 車駕 旋転す。東京 荒蕪たり。誠に此に因り、時に主を奉じて以て人望に従はば、大順なり。秉至せば、公 以て天下の大畧に服すなり。仁義を扶掩して、以て英雄の大徳に致るなり。
四方 逆節の臣有ると雖も、其れ何ぞ能く為すや。若し早く定めざれば、英雄をして心を生ぜしめ、後に慮を為すと雖も、亦 及ぶ無し」
曹操 乃ち大喜し、正要 收拾して起兵す。忽然、詔書の至る有り、操 天使を駅亭に待ち、一同に起発す。

曹操から行こうと思ったら、天子からも使者がきた。


帝 洛陽に在り、百事 未だ備らず。城郭 崩倒し、修めんと欲するも未だ能はず。人 報ず、「李傕・郭汜の兵 又 来到す」と。帝 大驚して楊奉に問ひて曰く、
「今 何処に投じ、難を躱すか。使 命じて山東に往き、未だ回らざる。如らず、曹操に去投するや」
楊奉・韓暹曰く、「臣 願はくは出戦せん」
董承曰く、「城廓 堅からず。兵甲 多からず。戦ひて如し勝たずんば、当に復た如何すべき」
人 報じて曰く、「傕・汜の兵 近し」

董承 帝・后を保ちて上車せしむ。山東を望みて進む。百官 馬無く、歩行して随ひ、洛陽を出ず。行くも一箭の地無し。但だ見る、塵頭 日を蔽ひ、金鼓 喧天し、無限の人馬 来到するを。帝・后 戦慄し、言ふ能はず。

誰がきたのかと。曹操以外の勢力が、献帝を襲うなら、ここに逸話を挟むべきだなw

忽ち見る、一騎 飛来し、車前に到る。便ち之を拝視するに、乃ち山東の使命なり。来る軍は何人ぞと問へば、使命曰く、
曹将軍 尽く山東の兵を起て、前来し、保駕す。李傕・郭汜 洛陽を犯すと聴知し、先に夏侯惇を差はして先鋒と為し、上将十員・精兵五万を引き、前来して保駕す」と。
帝の心 方に安んず。少頃 夏侯惇 許褚・典韋を引きて前来す。駕前 君に面し、三将 一斉に喏して曰く、
「甲胄の士 下拝する能はず。請ふ、軍礼を以て天子に見ゆるを」
皆 万歳を呼〈さけ〉ぶ。帝曰く、
「卿等 鞍馬・駆馳するも、賜と為す可き無し」
惇曰く、「主公の曹操 知る、傕・汜の賊 帝を犯し故を闕くを。

李卓吾本『三国演義』は、李傕・郭汜を、はじめ「李郭」といい、献帝を手放したあたりから「傕汜」という。姓を連ねれば「リカク」であり、名を連ねれば「カクシ」となる。つくづく運命的なコンビだと思う。

臣らをして先来せしめ、保駕す」
都纔 道ひ罷む。侍臣 又 報ず、
「正東に又 一路の軍の到る有り」と。
帝 挙止し失措す。
惇 拍馬して之を視て、便ち速来して奏報して曰く、
「陛下 放心せよ。乃ち曹操の歩軍 来到す。須臾 来見す」
天子 声は喏す。
帝 「何なる人か」と問ふ。惇 奏して曰く、
「乃ち曹操の弟の曹洪、副将の李典・楽進なり」
帝 問ひて曰く、「卿 何ぞ来る」
洪 奏して曰く、「臣の兄 賊兵の至近するを聴知す。夏侯惇・孤の力 為し難き〈負けること〉を恐れ、又 臣を差はし倍道して協助せしむ」
帝曰く、「曹将軍 乃ち寡人・社稷の臣なり」

傕汜 大兵を領し、長駆して来る。帝 夏侯惇をして両路に分け之を迎へしむ。
夏侯惇曰く、「臣 已に度量す。曹洪と両翼に分かち、馬軍は先出し、歩軍は後随す。力を儘して一撃す。傕汜の賊兵 大敗す。斬首すること万余なり。
帝に洛陽の故宮に還れと請ふ。夏侯惇 城外に屯兵す。

曹操が天子と対面する

次日、曹操 大勢を引き、人馬 来到す。三千の鉄甲を帯び、軍馬 入城し、屯兵 内にて諸大臣に前して列ぶ。引進して帝に朝見し、殿階の下に拝す。帝 平身を賜り、宣して上殿せしめ、慰労を問ひ畢はる。
曹操曰く、「臣 託す、我が王 洪福・斉天たるを。山東に聚兵し、昨 恩賜を承はる。思報は無門たり。傕汜 端無く、罪悪 貫盈す。臣 精兵四十余万有り。順を以て逆を討たば、克捷せざる無し。陛下 善く龍顔を保ちて以て社稷 重しと為せ」
帝 操を封じて司隷校尉を領せしめ、節鉞を假し、録尚書事とす。操 謝恩し畢はり、次日、便ち兵を進めて洛陽を離るること五十里、下寨す。

傕汜 操の遠来するを知き、議して速戦せんと欲す。
賈詡 諌めて曰く、「不可なり。操 数十万の精兵有り。文官・武将 其の数を知らず。如かず、戈を倒にし甲を卸し、之に降るを。本身の罪を免ずるを求めよ」

賈詡が曹操のところの人材の多さを認めて、降伏を勧めるのは、のちの張繍の伏線。意外にきっちり、早い時期から意思表示があった。

傕 怒りて曰く、「爾 敢へて吾が鋭気を滅すか」
左右 詡を将て之を斬らんとす。衆将 免を勧む。是の夜、賈詡 李傕を棄てて、単馬にて走回す。

賈詡を手放したら、いいことないのに。


次日、李傕の軍馬 操の兵を来迎す。操 先に許褚・曹仁・典韋をして三百の鉄騎を領せしむ。傕の陣中に衝突すること三遭。方纔 布陣す。陣圓の処 李傕の兄子たる李暹・李別 出陣して前み立馬す。
操 問ひて曰く、「此れ何なる人や」
尚ほ未だ人の回答有らざるに、許褚 飛馬し、一刀もて先に李暹を斬る。李別 這れ一驚し、陣前に出馬し、倒撞して下馬す。褚 之を斬り、双びに人頭を挽きて陣前に回る。人 敢へて追ふ無し。
曹操 許褚の背を拍して曰く、
「当世の樊噲なり」

「私の樊噲」ではないのね。

操 夏侯惇をして領兵して左に出でしめ、曹仁して領兵して出に右でしむ。操 自ら中軍にあり、衝陣す。鼓響一声、操の兵 斉挙す。傕汜の兵 大敗す。操 親ら宝剣を掣し、押陣す。
連夜、勦殺し、停む勿し。戈戟の星火 傕汜に赶逼す。

傕汜 忙忙たること喪家の犬に似て、急急たること漏網の魚の如し。
軍馬 三停・去二す。傕汜 西を望みて逃命す。此の時 天下 容さず。

李卓吾先生のアイノテですね。

山中に往き落草す。
曹操 兵を洛陽の城外に屯せしむ。

楊奉・韓暹が退場する

楊奉・韓暹 両箇 商議す。
「自今、曹操 大功を成し、必ず重権を掌す。如何に我等を容得せんや。若かず、天子に奏過し、只だ傕汜を做赶するを名と為し、本部の軍を引きて大梁に屯するに。機を看て変ぜん」
此に因り、二人 要去す。
献帝 阻みて、当に住くべからざるとす。

帝 命じて、操に宣して入宮せしむ。操 聞く、使 至りて入るを請ふと。並びて坐し、其の人を見るに、眉目 清秀・飄飄たり。然して神仙の気象有り。
操 之を悪む。今、東都 大荒す。官僚・軍民 皆 饑色有り。惟だ此の人の面上・精神、純雅たり。操 之に問ひて曰く、
「公 何ぞ能く調理すること此の如く有るや」
対へて曰く、「惟だ食淡すること三十年なるのみ」
曹操 問ひて曰く、「君 何なる職に居る」
対へて曰く、「某 孝廉に挙られ、原旧 袁紹・張楊に随ひ、従事と作る。其の人 皆 治乱の主に非ざるを見る。今 聞く、天子 還都すと。朝に特来し、官を覲て、正に議郎に封ぜらる」
済陰の定陶の人なり。姓は董、名は昭、表字は公仁なり。
曹操 席を避け起敬して曰く、
「公の大名を聞くこと久し。幸にも此に相見するを得たり」
帳中に置酒し、相待し、〈董昭を〉荀彧と相会せしむ。

忽ち一人 報じて曰く、
「一隊の軍 東に往きて去る。何なる人やを知らず」
操 急ぎ人をして之を追はしむ。
董昭曰く、「此れ乃ち李傕の旧将たる楊奉、白波帥の韓暹なり。明公の勢を観て、兵を引きて大梁に往く」
操曰く、「操を疑ふこと非ざる莫し」
昭曰く、「此れ乃ち無謀の鼠輩なり。明公 何ぞ之を慮るに足らん」
操 又 曰く、「汜傕 此に去ること、如何に」
昭曰く、「此に去るに、虎に爪無く、鳥に翼無し。明公に擒はること久しからず。意に介するに足る無し」

董承が許への遷都をいう

操 昭の語言を見て、機に投じて便ち言ひて曰く、
「請ふ、朝廷の大事を問はんと。若何や」
昭曰く、明公 義兵を興して以て暴乱を誅し、入朝して天子を輔佐する者なり。此れ五霸の功なり。以下の諸将、人ごとに殊に意 異なり。未だ必しも服従せず。今 留まりて匡弼せば、事勢 便ならず。惟だ駕を移して許都に幸せしむに有り。然るに朝廷 播越し、新たに京師に還る。遠近 仰望す。一朝 安を獲るを冀ふを以て、今 復た駕を徙せ、衆心を厭ふな。夫れ非常の事を行ふに、乃ち非常の功有あり。

ムリを断行しろと。ムチャだよなー。

願はくは将軍、大を算する者なら、之を行へ」
昭の手を執り、大笑して曰く、
「此れ乃ち孤の本志なり」
操 又 曰く、「楊奉 大梁に在り、大臣 朝に在り。倘し裏に応じ、外に合すれば若何」

楊奉と、大臣の董承らは、どちらも曹操の敵。


昭曰く、「易きなり。書を以て奉に与へ、且に其心を安ぜよ。大臣 之を聞かば則ち、〈曹操が大臣に〉曰へ、『京師 糧無し。欲車駕を許都に幸せ。魯陽に近く、糧食を転運すれば、稍々欠欠・懸隔の憂無し』と。大臣 之を聞けば、皆 欣然たらん」
操 大喜し、「願ふ、公 早晩に之に従へ。行ふ可からざる有れば、之を教へよ。自ら厚報に当つ」と。
昭 拝謝して曰く、「此自り随順す」

漢魏革命を論じる

操 猶ほ遷都の事を豫す。時に侍中・太史令の王立、宗正の劉艾有りて曰く、
「吾 天文を仰観して、以て炎漢の気数 自ら去るを察す。春、太白 鎮星を牛斗に犯し、天津を過ぐ。熒惑 又 逆行し、太白と天関に会す。金火 交会するは、必ず新天子の出づる有り。吾 観るに、大漢の気数 終る。晋魏の地 必ず興る者有り。

晋魏の地とは、袁紹だよな、ぜったい。

立〈王立〉 是の言を以て献帝の前に曰く、
「天命に去就有り。五行 常盛あらず。火に代はる者は土なり。漢の天下を承くる者は必ず魏なり。能く天下を安ずる者は必ず曹姓なり。当に曹氏に委任するのみ」

操 之を聞き、人をして立に告げしめて曰く、
「知る、公の朝廷に忠たるを。然るに天道 深遠なり。幸にも多言する勿れ」
操 是を以て彧に告ぐ。彧曰く、
「漢朝・劉氏 火徳を以て天下に王たり。故に両都 皆 興る。今 主公 乃ち土命なり。許都 土に属す彼に到れば、必ず興らん。火 能く土を生ず。土 能く木を旺す。正に合ふべし」

荀彧が、わりに革命の推進派みたいなことをいう。


董昭・王立の言 他日 必ず王者の興る有りとす。操の意 遂に决す。次日、引軍して洛陽に入り、帝に見えて奏して曰く、
「東都 廃弛の地となりて久し。修葺し更兼す可からず。糧食を転運することに艱辛す。臣 料る、許都の地は魯陽に近く、城郭・宮室・銭糧・民物 足りて備ふ可し。鑾 輿を幸す可し。臣 排辦し、已に定む。便ち請ふ、陛下 登輦せよ」
群臣 皆 曹操の勢を懼れ、敢へて言ふ者莫し。

満寵が徐晃を説得する

即日、駕 起つ。操 軍馬を分排し、尽く百官をして遷都せしむ。行来すること数程、前面 高林に至り、忽然、喊声 大挙す。
楊奉・韓暹 領兵して路を欄ぐ。徐晃 大叫し、
「〈曹操が〉車駕を刼せんと欲す。何こに往く」
操 馬を出して之を視るに、徐晃の神威 糾糾・暗暗たるを見て、奇と称ふ。
操 許褚をして出馬せしめ、徐晃と交鋒す。刀斧 相ひ交戦すること五十余合、勝敗を分たず。操 鳴金して軍を收め、各自 下寨す。操 文武を召して議して曰く、
「吾 今日 陣上に在り、徐晃の真に良将なるを観る。力を以て之を併すに忍びず。思ふ、一奇計もて招諭し過来せんことを。奉・暹 豈に道ふに足るや」
一人曰く、「主公 慮る勿れ。某 素より徐晃と一面の交有り。今晩、一小卒に扮し、晃の営に偸入す。緊慢なるを看て、言説を以て之を来降せしむ。主公 若何」
操 之を視るに、乃ち山陽の昌邑の人なり、姓は満、名は寵、字は伯寧なり。行軍従事たり。操 行かしむ。

却説 満寵 一小卒に扮し、雜りて隊中に在り。晃の営 中軍の帳前に入る。晃 渾身 甲を披きて帳下に寵を看見す。寵 入りて長揖して曰く、
「故人 安楽するや否や」
徐晃 之を見て、久しく立ちて乃ち曰く、
山陽の満伯寧に非ざる莫きや」
晃 年小なる時、山陽に在りて官と為る。吏と為り、人に買物を奪はれ、官に告ぐ。因りて識有り。

そんな過去のエピソード、列伝にあるのか?

寵曰く、「然り」と。
晃曰く、「何故 此に到る」
寵曰く、「曹操 兗州に在りて、我に請ひて従事と作す。今日 偶々故人に陣上に耀武するを見る。吾 甚だ之を惜む。故に死を避けず来直し、公を諌む。公の勇に拠れば、世の罕たる有り。何故に楊奉・韓暹の徒に屈身するや。曹将軍 之 英雄なり。漢室を力扶し、生霊を拯救す。今日、陣前に健将を以て死戦を决する忍びず、故に寵を遣して来らしむ。公 何ぞ暗に背きて明に投ぜざる」
晃 喟然と歎じて曰く、「吾 固より知る、奉・暹 立業の人に非ざるを。争奈 之に従ふこと久し。相ひ捨つること忍びず」
寵曰く、「豈に聞かずや、良禽 木を相びて棲む。賢臣 主を擇びて事ふと。大丈夫 知りて為さざるは、丈夫に非ず」
晃 身を起し謝して曰く、
「願はくは公の言を聴かん」
寵曰く、「何ぞ就ち奉・暹を殺して、以て進見の功と為さざる」
晃曰く、「臣を以て主を殺すは、大不義なり。吾之を為さず」
寵曰く、「公 真に有徳の士なり」

曹操が、楊奉・韓暹を殺す手間までは、省けなかったw

遂に帳下の数十騎を引き、満寵と同に曹操に来投す。

早く人の報ずる有り、中軍に入り、
「楊奉 千百騎を引きて来る」
徐晃を追ひて赶上し、大叫して休む。山上に走げ、山下の火把 斉明たり。曹操 大喝す、「吾ら逆賊 多時なり。走脱せしむ休かれ。両下 伏兵 皆 起来し、楊奉を捉へんとす。還是 如何。141028

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第14回下_呂布 月夜に徐州を奪ふ

楊奉・韓暹が、袁術を頼る

曹操 号するや、伏兵を起し、楊奉・韓暹を囲住す。急ぎ引兵して来救し、両邉を解きて夾攻す。楊奉 走脱す。操 奉・暹の軍の乱るるに趂し、勢に乗じて便ち撃つ。将に去かんとし、楊奉・韓暹 大敗す。敗軍 多半 曹に降る。
奉・暹の勢 孤たり。引兵し、袁術に去投し、以て安身を図る。話下在らず。

そこを詳しく聞きたかったのにw


許都に朝廷をつくる

却説 操 徐晃を得て将と為し、大喜す。鑾駕を来迎し、許都に到る。旋し、官室・殿宇を造し、宗廟・社稷・省台・司院・衙門を立て、城郭・府庫を修む。
董承ら十三人を封じて列侯と為す。功を賞し罪を罰す。並せて聴くは、曹操の処置なり。
操 自ら封じて大将軍・武平侯と為る。荀彧を以て侍中・尚書令と為す。荀攸を軍師と為し、郭嘉を司馬祭酒と為し、劉曄を司空曹掾と為す。
毛玠・任峻 典農中郎将と為り、銭糧を催督す。程昱をして東平相と為らしめ、范成・董昭 洛陽令と為る。満寵 許都令と為る。
夏侯惇・夏侯淵・曹仁・曹洪 皆 将軍と為る。呂虔・李典・楽進・于禁・徐晃 皆 校尉と為る。許褚・典韋 皆 都尉と作る。其の余の将士 各各 官に封ぜらる。此自り大権 皆 曹操に帰す。

出入するに鉄甲を長帯し、軍馬 数百あり。朝中の大臣 事有れば先に曹操に禀し、然る後、方に天子に奏す。

荀彧が、呂布・袁術に2つの計略を仕掛ける

操 既に大事を定め、乃ち一宴を後堂に設け、衆の謀士を聚め、共に議す。

ここで曹操の事業の完成とするのは、史実に反する上に、あまりは話をおもしろくしない。」「曹操の一強」は、河北を平定した後に、取っておかねば。

操曰く、「吾 今 以て王室を尊び、位は三公に至る。皆 汝ら之を助くるを頼る。吾 憂ふ所の者は、袁術・袁紹のみ。此の二人 已に土地に拠り、未だ之を図る可からず。劉備 見るに、徐州に屯し、已に州事を領す。近く呂布 山東に在り。〈呂布は〉吾に殺敗し、今 劉備に投じ、小沛に養はる。二人 若し互相して起兵せば、乃ち吾が心腹の大患なり。公ら何か妙計の之を図る可き有るや」
許褚曰く、「願ふ、精兵五万を借り、劉備・呂布の頭を斬り、丞相に献与せん」

すっげーザツ。

荀彧曰く、「将軍 勇なるとも、則ち勇なるのみ。如かず、謀を用ゐるに。今 許都 新らに定め、未だ造次し用兵す可からず。彧に一計有り、名づけて曰ふ、『二虎兢食の計』と」
操曰く、「何を謂ふや」
彧曰く、「譬如へば、巖下に一対の餓虎 往来し、食を尋ぬ。山上に食を以て投づれば、下の二虎 必ず其の餐を兢ふ。二虎 争闘し、必ず一傷有りて止み、一虎のみ存す。此の虎も亦 誅す可し。
今、劉備 徐州を領すると雖も、未だ詔命を得ず。今 主公 劉備をして徐州牧を正授す可し。密かに一書を与へ、呂布を殺さしめよ。事 成れば、則ち劉備も亦 事を図る可し。成らずんば則ち、呂布 必ず劉備を殺す。此れ乃ち、二虎兢食の計なり」
操曰く、「然らば、即時、便ち使命を差はし詔をあたへ、劉備を封じて正東将軍・宜城亭侯と為し、徐州牧を正領せしむめよ。又 密書を付し、便ち行はしめよ」

劉備が二虎競食を退ける

却説 劉玄徳 徐州に在り、曹操の帝于許都に遷すを聞く。
恰かも人をして前去し慶賀せしめんと欲するに、忽ち報ず、天使 至ると。郭を出て迎接し、入郡せしむ。詔を拝し、恩命を受く。已に畢はり、宴を設けて来使を管待す。
使曰く、「曹将軍 帝前に力保し、使君 故に首先めに此の恩命に頒す」
玄徳曰く、「感謝すること無尽たり」
使命 間に坐し、私書を取出し、玄徳に逓与す。玄徳 看て曰く、
「此の事 尚ほ計議するを容せ」
席 散じ、使に駅館に安下せよと請ふ。

玄徳 連夜、糜竺・糜芳・簡雍・孫乾・関張の二将の衆らと商議す。
張飛曰く、「呂布 無恩の人なり。之を殺すに、何をか礙ふ」
玄徳曰く、「他の人〈呂布〉 志は極まり事は窮まりて我に来投す。我 若し之を殺さば、大いに不義なり」
張飛曰く、「好人 做し難し」
玄徳 喝して張飛を退けて起たしむ。

次日の清晨、人 呂布の来到するを報ず。玄徳 請ひて布を入見せしめて曰く、
「聞知す、朝廷 恩命を送り、至る。特来して相賀す」と。
却纔、下拝す。張飛 扯剣し、下𠫊より呂布に来殺す。玄徳 慌忙して〈張飛を〉阻住す。
呂布 大驚して曰く、「翼徳 何故に只我を殺さんと要す」
張飛 叫びて曰く、「曹操 道ふ、爾 是れ無義の人なり。我が哥哥をして爾を殺さしむ」

張飛が、曹操の言葉を真に受けて引用してるw

布曰く、「我と爾と無讐なり」
玄徳 喝して張飛を退く。玄徳 呂布と共に後堂に同入し、前因を告訴す。就ち曹操 密書を送ると。呂布 之を看る。布 看畢はり、泣きて曰く、
「此れ乃ち、曹賊 我が弟兄をして不和ならしめんとす」
玄徳曰く、「兄長、憂れふ無かれ。劉備 此の意無し。県中、如し糧草少なくば、小弟 一一応付す」
呂布 拝謝す。備 呂布と吃し罷み、早膳す。布 告回す。玄徳 親ら城外に送出す。布 拝別して去る。

関・張曰く、
「兄長 何が故に呂布を殺すを肯ぜざる」
玄徳曰く、「此れ乃ち曹丞相 我に呂布を一処に疑はしめ、故に我ら両家をして自ら相吞・併他せしめ、却りて坐して成敗を観る。此れ乃ち二雄 並立せざるの計なり」
関公曰く、「然り」
張飛曰く、「我 只だ此の賊を殺すを要して以て後患を絶たん」
玄徳曰く、「丈夫の為す所に非ざるなり」

玄徳 館駅に到り、使命を送り回す。就ち表に拝して謝恩し、并びに書を回して曹操に呈し、只だ言ふ、
「之を緩図するを容せ」
使命 回りて曹操に見へ、玄徳 呂布を殺さざるの事を言ふ。

荀彧が劉備に、袁術を討たせる

操 荀彧に問て曰く、「此の計 成らず。奈何せん」
彧曰く、「又 一計有り。名づけて駆虎吞狼の計と曰ふ」
操曰く、「何を為すや」
彧曰く、「暗かに人を袁術の処に往かしめ、問ふ可し、『安んぞ就ち報ぜんや。劉備 上表し、南陽を要畧せんとす』と。術をして兵を動かして劉備を攻めしめ、却りて明かに詔し、劉備をして袁術を討たしむ。両邉 相併せば、呂布 必ず異 心を生ず。此れ乃ち、駆虎吞狼の計なり」
操 大喜し、先に人を発して袁術の処に往かしめ、次に人を発して徐州に往かしむ。使命 詔を□して便ち行く。

玄徳 徐州に在り、使命の至るを聞知し、郭を出でて迎接す。詔書を開読して云はく、
「起兵して袁術を討つ」と。
玄徳 命を領し、使者 先に回る。
糜竺曰く、「此れ又 曹操の計なり」
玄徳曰く、「計なりと雖も、王命 違ふ可からず」
遂に軍馬を點し、起程す。孫乾曰く、
「以て先に守城の人を定む可し」
玄徳曰く、「二弟の中 誰人 守る可きか」
関公曰く、「弟 願はくは此の城を守把せん」
玄徳曰く、「吾 早晩 爾と議事せんと欲す。豈に相ひ離す可きか」
張飛曰く、「小弟 願はくは此の城を守らん」
玄徳曰く、「你 守りて此の城を得ず。你 一者に、酒後に剛強たりて、士卒を鞭撻す。二者 事を作すこと軽易にして人の諌に従はず。吾 故に放心せざるなり」
張飛曰く、「小弟 自今より以後、飲酒せず、軍士 打たず。諸般 人の勧諌を聴く」
玄徳曰く、「你 若し此の如くんば、吾 何ぞ憂はん」
糜竺曰く、「只だ恐る、口 心に応ぜざるを」
飛怒曰く、「我 哥哥と多年、未だ嘗て信を失はず。何ぞ敢へて我を料るや」
玄徳曰く、「弟の性 此の如し。吾 放心せず。陳元龍に請ひて軍師と為す。早晩、張飛をして飲酒を少からしめ、事を失はしむ勿かれ」
玄徳 俱に馬軍・歩卒三万を分付し、徐州を離れ、南陽に進発して往く。

却説 袁術 聴得す、
「劉備 上表して吾が州県を吞まんと欲す」
を。術 大怒して曰く、
「汝 乃ち織蓆・編履の夫なり。安んぞ敢へて大郡を占拠し、諸侯と列を同じうす。吾 正に汝を伐たんと欲するに、汝 却返りて害を行ふ。我 乃ち上将の紀霊を呼び、十万を起兵し、徐州に殺奔せしむ」

劉備と袁術が盱眙で戦う

両軍 並せて盱眙に起会す。
玄徳の兵 少なく、山に依り水に傍り、下寨す。紀霊 乃ち山東の人なり。一口三尖刀を使ふ。重さ五十斤。手下の戦将 極めて多し。
是の日、紀霊 兵を引き出陣し、劉備を大罵す。
「村夫 安にか敢へて吾が境界を侵す」
玄徳曰く、「吾 明命を奉り、順を以て逆を討つ。汝 今 罪 誅を容れず」
紀霊 大怒し、拍馬・舞刀し、玄徳に来迎す。関公 大喝して曰く、
「吾 此に在り」
驟馬し、紀霊と大戦すること三十合、紀霊 少しく歇し、関公 陣に回りて立馬し、久しく等つ。紀霊 手将の荀正遣はして出馬せしむ。
関公曰く、「只だ紀霊を来らしめよ。他と箇の勝負を决さん」
荀正曰く、「汝 乃ち無名の下将なり。紀将軍の対手に非ず」

そのとおりだったw

関公 大怒し、荀正に直取す。交馬すること一合、荀正を馬下に砍る。玄徳 駆兵し、紀霊を殺敗せしむ。
紀霊 退きて淮陰の河口を守る。並せて敢へて交戦せず。時に只 軍士をして、営を偸み寨を刼めしむ。皆 徐州の兵に殺敗せらる。
両邉 相拒して勝負するに、未だ分たず。

張飛が曹豹をなぐる

却説 張飛 自ら玄徳を送り、登程す。一に民訟に応ず。陳元龍と並びて軍機の大事を管理し、自家 掌管す。
飛 和気を失ふを恐れ、乃ち一宴を設く。遂に各官に席に赴けと請ふ。是の日、筵席上、張飛 開言して曰く、
「我が哥哥 去る時に臨みて我に分付す、飲酒を少くせよと。大事を失するを恐るればなり。衆の朋友 今日自り、尽く此れ一酔せよ。明日、禁酒す。各各 都な満飲せよ。凡事 都な我を幇助し、城池を保守せよ」

酒 到り、陶謙の手下の旧将たる曹豹、面前す。豹曰く、
「我 天に従ひて飲酒せざると戒む」
張飛曰く、「厮殺の漢、如何に飲酒せざる。我 你に一盞を吃はしむ」
豹 懼怕し、只だ一盃を飲むを得たり。張飛 把遍し、各官 暢飲し大酔す。飛 又 起身し、盞を把す。曹豹曰く、
「其の実 飲む能はず」
飛曰く、「你 恰かも纔かに喫へるも、如何に推却するや」

さっき飲んだのに、なんで飲めないと言うのか。

豹 再三 飲まず。
飛曰く、「你 将令に違ふ。一百の背花を打つ該し。軍に喝し、捉下せしむ。陳元龍曰く、
「玄徳 去る時に臨み、你に甚麽〈なに〉を分付するや」
飛曰く、「你 文官なり。只だ文官の事を管せ。来りて我を惹く休れ」

陳珪・陳登は、ただの「文官」か?なんだか、陳珪・陳登は、呂布と劉備(張飛)のどちらも迷惑で、ただ普通に統治してくれる、見識ある高官を徐州牧に迎えたかっただけでは、と同情してしまう。

曹豹曰く、「看よ我が女婿の面を。且つ饒を以て曹豹を恕せ」
飛曰く、「你が女婿は誰ぞ」
豹曰く「呂布なり」
飛 大怒して曰く、「我 本より你を打ざるに、你 故に呂布を説き、我を諕す。我 你を打つ。你を借して呂布を打つとす

お前を打って、呂布を打ったことにする。

諸人 勧むるとも住めず。曹豹を将て打つこと五十に至る。衆人 苦告す。饒し了はりて各 皆 散去す。

呂布が下邳をうばう

曹豹 回りて深く張飛を恨み、痛み骨髓に入る。連夜、人を差はして書一封を贈り、小沛に徑投して、呂布に見ふ。呂布 書を将て看て云はく、
「玄徳 已に淮南に往く。飛の酔に乗じて徐州を取る可し。今番、錯りて過さば、之を悔いても晩し」
呂布、連夜 陳宮に請ひて此の事を議せしむ。
宮曰く、「只だ小沛に在り、何日に争嶸す。今、若し取らざれば、宮 必ず去る」
布 赤兎馬を備はしめ、全身 披掛し、手に方天戟を持し、五百騎を領し、軍 先に徐州に往く。陳宮 後に大軍を引き、高順 後に随ふ。進発し、只だ四十五里、上馬 便ち到る。
呂布 城下に到るとき、時に恰纔 四更なり。月色は澄澄たり、城上 並に知覚せず、布の到るを。城門の邉 叫びて云ふ、「劉使君より使命有りて至る」と。城上に曹豹の軍有り。曹豹に報知す。曹豹 上城して之を看て、軍士をして開門せしむ。城に入得する時、喊声 大挙す。

月が云々、て詩文の混入か?


飛 府中に在りて酔倒す。酒 猶ほ未だ醒めず。左右の人 急ぎ揺醒す。人 呂布の賺りて城門を開くを報しむ。張飛 人をして馬を備はしむ。慌忙と披掛し、上馬し、丈八矛を綽して手に在り。
時に呂布の軍馬 到来す。張飛 出府する時、呂布に正見し、相迎ふ。酒 猶ほ未だ醒めず、戦ふ能はず。呂布 素より知る、飛の勇なるを。亦 敢へて飛に逼らず。十八騎の燕将 飛を保ち、東門より殺出す。

曹豹 飛の只だ十数人のみ護従するを見て、百十人を引き、赶来す。飛 豹を見て大怒し、拍馬して来迎す。豹 戦ふこと三合、敗走す。飛 赶到し、河邉に一鎗もて豹を剌す。人を連ね馬に帯び、河中に死す。
飛 城外に士卒を招呼す。城を出る者、尽く飛に随ひ、淮南に投じて去る。

呂布 城中に居民を安撫し、軍一百をして玄徳の宅門を守把せしめ、諸人 進入するを許さず。此れ呂布の弟兄の情なり。

そんな解説があったのかw


却説 張飛 数十騎を引し、盱眙に直到し、玄徳に来見して説く、
「曹豹 門を呂布に献じて、徐州を夜襲す」と。
衆 皆 色を失ふ。
玄徳 歎じて曰く、
「得て何ぞ喜ぶに足る。失ひて何ぞ憂ふに足る」
関公曰く、「嫂嫂 安にか在る」
飛曰く、「皆 城中に陥らる」
玄徳 黙黙として語無し。
関公曰く、「你 当初、城を守る時、説くは甚〈なん〉ぞ。兄長 你に分付するは甚〈なん〉ぞ。今日 城池 又 失ひ、嫂嫂 又 陥らる。你 死して猶ほ恨むこと遅からん。尚ほ何の面目有りて兄長に見ゆ」
張飛 言を聞き、惶恐して地無し。掣剣もて自刎せんと欲す。性命 如何。下回便見。141028

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