表紙 > 読書録 > 中島三千恒『赤壁ストライブ』のメモ

おもしろい部分の抜粋

満田剛先生が、ご紹介なさってた本。
「よく調べて書いてあると思います。赤壁のとき陸遜は、きっとこんな感じだったかも知れない。そういう漫画です」
とのコメントを聞き、探してきました。

古本屋で手に入れられず、新品で購入。新品ですら、在庫僅少?

読みました。
確かに内容は、よく練られています。しかし残念なことに、老人を描くのがうまくない。若者の顔に、線とヒゲを足しただけです。うーん。

曹操の凄みを、表現できてない。つらいなあ。

だいたいの内容(ネタバレ)

1話:越えられない背中
孫権が、兄への劣等感を克服する話。
「孫策なら、曹操の降伏状をただちに破り捨てただろうなあ」
と悩む。だが孫策は、反対者を抑圧していただけ。結果、暗殺された。

次話で明らかになるが、孫策を殺したのは陸遜。

孫権は、調整役に回ることが、自分の君主としてのアイデンティティだと気づく。気づかせたのは魯粛。魯粛がいう。
覇王たる孫策や曹操でなく、調整役(王者)孫権に仕えたい」

2話:呉越同船
朱桓と陸議が、北方に逃亡しようとする。陸議が頼るのは、王朗。
周瑜は、陸議たちを討伐。だが孫権が和解させた。

満田先生がご紹介されていた部分は、これか!

「越は、始皇帝の支配から逃れた人が、移り住んだ土地。いくら曹操が中央の秩序を回復しても、朝廷の威光は届かない土地だ」と、孫権。
陸議は協力を誓う。ケジメのため、名を「議」から「遜」に改めた。

3話:背信の美周郎
太史慈が死ぬとき「男に生まれたなら、天子を目指すべきを」と言う。周瑜は、太史慈のセリフが忘れられない。

この本と関係ないが。
太史慈は『呉書』で、孫氏が倒した群雄として扱われている。太史慈その人の思想とは関係なく、天下への野心が、書き加えられたんじゃないか。ライバルが立派であるほど、それを倒した孫氏が尊くなるという筆法だ。
この漫画でも、太史慈は孫氏の臣下に徹したのに、遺言だけが浮いていることをネタにしている。

周瑜は宴席で、揚州の長江北岸や、徐州を回復することを否定した。輿論を形成する徐州出身者は、周瑜をきらう。
周瑜は徐州より、荊州を取り、天下を目指せという。
「長江より北は、ないと思え」

この本と関係ないが、呂蒙伝にある。徐州は陸続きだから、曹操が騎馬で攻めやすい。もし徐州を奪っても、どうせ孫権は保てない。

たまたま蒋幹が訪れ、周瑜に内通の疑いがかかった。だが孫権は、程普と周瑜を都督に任じ、協力するように仕向けた。

4話:老将たちの憂鬱
程普は、周瑜と対立。周瑜が洞庭湖を奇襲するが、程普は協力しない。
劉備が周瑜を、酷評した。
「中身が若すぎる。初陣の延長の心地だ。孫策の死で、時間が止まっている。程普が保護者にならねば、コロッと死ぬよ」
周瑜と程普が和解。奇襲は成功。
これにて劉備は「高みの見物」をすることを得た。

劉備が人間関係を仲介した理由は、これ。ダークだ。


5話:赤壁の戦い(前編)
黄蓋は苦労人。地位は上がらず、仕事ばかり大変。捨て身の火刑を進言したが、周瑜に却下された。
「命と引き換えに一矢を報いるだけの戦法は、いけない。あなたのプライドは満たせても、大局を動かせません」
のちに周瑜は、風向きが変わることを知り、黄蓋に火刑を許した。
さきに諸葛亮は「江南人士の気脈が天へと上れば、風向きもおのずと変わる」と解説するが、周瑜は諸葛亮の非科学を相手にしない。

『演義』へのアンチテーゼですね。諸葛亮が観測している場所は、明らかに道教っぽい祭壇なのに。


6話:赤壁の戦い(後編)
火計成功。下級兵士に顔を知られず、厠に収容された黄蓋。
周瑜は曹操に、宣言した。もし曹操が死に、「曹賊」という建前が使えなくなっても、漢王朝に侵略すると。そこまで言って周瑜は、正統論争を孫権に預けた。周瑜は荊州攻めに徹する。

周瑜は、孫氏を独立させ、天下を取りたい人とされる。

赤壁に勝ったあと、暴動が起きた。「合肥を回復し、徐州を取り返してくれるのでは、なかったか」と。孫権は、勝てないことを知りつつ、ポーズだけの出陣を決めた。調整役として、腕の見せどころだ。
孫権は「孫呉の限界」を、微妙な舵取りで乗り切る。21年後、大義名分も正義もなく、孫権は皇帝となった。

おわりに

陸遜が北に逃げるところが、いちばん面白いかな。まあ、これを読むために買ったわけだし。黒幕の朱桓についても知りたい。
同じ作者『建安マエストロ』も買ってしまいました。。100405

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