表紙 > 読書録 > 仲達が司馬炎に『孟子』『荀子』を講義したら

01) 司馬炎が、仲達を見舞う

澤田多喜男&小野四平訳『荀子』中央公論新社2001
貝塚茂樹訳『孟子』中央公論新社2006

を読みました。
今回は、司馬懿から、孫の司馬炎に向けて、『孟子』と『荀子』を講義させます。この講義が行なわれたことは、史料にありません。フィクションです。ぼくの小説です。でも、
「きっと、こんな感じになっただろうなあ」
という、キャラ設定だけは保つように努力します。

このページのねらい

①『孟子』『荀子』で代表的な、性善説&性悪説を知る
②『孟子』『荀子』が説く、王朝の交代を知る
③司馬懿に、王朝の交代をダークに語らせて遊ぶ

このお話の設定

司馬懿が、曹爽との権力闘争に敗れ、在宅ひきこもりを始めるのは、247年です。曹爽にクーデターを起こすのが249年だから、司馬懿は2年間はヒマでした。
司馬炎の誕生は、236年です。司馬懿が引きこもっていたとき、12歳から14歳です。ちょうどこの間に、司馬懿がヒマ潰しに、孫に教育をしていたと「妄想」します。

司馬氏の強さは、司馬師、司馬昭、司馬孚ほか、権力闘争の強さが、持続したことです。1代限りの傑物は多いが、2代3代と持続するには、マレだ。特別な事情がありそうだ。
この特別な事情こそ、司馬懿が引きこもった2年間の教育の成果だと思います。ぼくの想像ですが。

以後、司馬懿のことを「仲達」と呼びます。なぜなら、パッと見たとき、司馬炎と紛らわしいからです。区別のためです。

司馬懿が孫に、仮病をバラす

司馬炎が、仲達を見舞った。
「おじいさま、ご体調はいかがですか」
「ああ、炎か」
「ご体調はいかがですか」
「炎よ。本気で私の病状を、心配しているのか。それとも、私の仮病の腕前を、探りにきたのか
「探りなんて、滅相もない。私はおじいさまが、心配で・・・」
「よい、よいぞ。その擬態、評価できる」
「何をおっしゃいますか」
「炎よ。うまいぞ。顔が青ざめている。生半可な素質では、そこまで真に迫る演技はできまい。私より上手い」
「いいえ、何を申されますか。私はただ、おじいさまがご病気で倒れられ、ご退職なされたと聞いたから、心配で参ったのです」
「もう良い。ざっくばらんに、話そうではないか」
「??」
「役者はな、舞台から降りたら、仮面を脱いでもいいのだよ。祖父と孫の間柄で、これ以上の演技は、必要あるまい

仲達は、ベッドから立ち上がって、積み重ねた書物を取った。司馬炎は、歓喜の表情を浮かべた。
「おじいさま、もう、そんなに回復なされて!」
「おい炎、もう良いと言っただろう。お前だけが擬態を続けると、先に仮面を脱いだ私が、競り負けたみたいになるだろう。勘弁せよ」

司馬炎は「至孝の皇帝」となる人物です。子供のとき、これくらい直情に、父祖のことを慕ったんじゃないかなあ。
仲達は、腹芸の横行する、宮廷闘争を好まなかった。だから、いま曹爽に負けて、引退してる。仲達が、かわいい孫に対して、仮病を隠し通したとは思いません。
儒教では、家の中は治外法権だと言うし。

司馬炎は、禅譲を勉強したい

仲達が、司馬炎に聞いた。
「お前は、『孟子』と『荀子』を読んだかな」
「父上に言われて、読みました」

三国ファンには無用の注釈ですが、、司馬炎の父は、仲達の次男・司馬昭です。

「感想は?」
「1つ1つの文句は、なるほど、と感心して読みました。知識が増えた気がします。でも、だからと言って、生き方が変わったわけではありません。己の不明を恥じています」
「正直で可愛いやつだ。お前に、大切なことを教えてやる。書物を読むときは、目的を持ちなさい。名著と言われる本は、じつに多くのことが書いてある。全てを理解するのは、難しい。だから目的をもち、今日の目的に関わらないところは、読み飛ばしてよい」
「本当にそれで宜しいのですか」
「満遍なく読んで、何も残らないより、マシだ」

仲達は、ひと呼吸をおいた。
「ときに炎は、何に興味があるか。お前の関心に合わせて、私が『孟子』と『荀子』を教えてやろう」
「禅譲に関心がございます」
「王朝の交代か。なぜそんなことに興味を持つのか。漢から魏への禅譲は、すでに25年も前のこと。これから就職するお前に必要なのは、例えば、臣下のあるべき姿だ」
父上(司馬昭)が、禅譲のことを盛んに調べておられるのです。だから私も、父上のお力になりたい」

ぼくの想像です。きっと司馬昭なら、司馬師を継ぐ前から、禅譲のデータ収集をしていたんじゃなかろうかと。

「・・・昭のやつめ・・・」
「いけませんか」
「いや、興味を持ったことが、学ぶべきことだ」

次回から、本題へ入ります。
まず初めに、仲達にダイジェストをさせます。

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