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01) 三国キャラは麻薬中毒

2週間ぶりに更新します。
塚本青史『仲達』の感想を書きます。ちゃんと最後まで読めました。

この作家の不思議

なぜだか面白くない!最後まで読めない!
塚本氏は『王莽』『光武帝』なども書いてます。タイトルだけ見ると、単行本を定価の3倍で買っても惜しくないほどに、惹きつけられる。しかし小説が肌に合わず、途中で飽きてしまう。

王莽を主人公にした小説を他に知らないので、もう何度も挑戦していますが、まだ半分を読み終わったことすらない。

なぜ面白くないのかなあ。
今回の『仲達』は今年1月末に出版で、2月か3月にはすでに本屋で見つけていたのだが、買わなかった。10ヶ月も我慢していた。タイトルからすれば、単行本を5倍の金額で買っても別にいいくらいなのに。

この10ヶ月の間に、有象無象のハズレ本に数万円を費やしてもなお、見送っていた。本にかけるお金がないわけじゃないのです。

今回、豊田市立図書館が仕入れたので、読みました。

この本の価値=麻薬

アマゾンの書評では、
「孔明死後を描いたから、すごい」
と書いてあったが、今さらそんなことで、知識欲を満たされない。孔明死後に興味を持って、南朝宋までこのサイトで扱っているのです。
じゃあ、何が新しいか。
三国の英雄たちを、ことごとく麻薬中毒にしたこと。
これです。
まるで今年の夏以降、ノリピーや押尾騒動が起きるのを予見していたかのような。2009年は麻薬の歳なんだろうか。

◆魏の麻薬
曹操は、張済と鄒氏の娘に、少量の麻薬を盛られ続けて、中毒死した。娘は、麻沸散で外科手術をした華佗の技術を継いだ設定だ。頭痛の治療に乗じて、曹操を廃人にした。
同じ娘は、夏侯尚で人体実験をやって狂わせ、同じ麻薬で曹丕を早死にさせた。曹叡も同じ中毒で早死にした。
涼州の董卓の残党による、曹氏への復讐なんだって。曹氏の名君を次々に倒して、幼弱な曹芳が即位したところで、麻薬攻撃は已みます。

三国志を黄巾の乱から描いている小説ではありません。曹操の死から始まります。つまり董卓は「過去の人」です。登場しない連中の復讐を見せられても、盛り上がらないよなあ。


この張済の娘は、はじめ仲達の妾だ。
だがなぜか、仲達に麻薬を盛らなかった。娘の真意を、作中でキャラに悟らせてはいない。だが作者が露骨に仄めかしているのが、仲達が曹氏を滅ぼすことを期待して、麻薬の使用を避けた風である。

曹丕が即位する前から、のちに仲達の司馬氏が禅譲を迫ることを見通したとは、この張済の娘こそ、塚本氏の小説の中でもっとも先見の明がある人物だ。主人公の仲達など、二流の知恵者だ。見せ場のない諸葛亮は三流だ。
さすがオリジナルキャラは、作者=天帝と交信できる。


◆蜀の麻薬
蜀は蜀とて、麻薬に染まっている。
徐庶と鄒氏が、麻酔医学を持ち込んだ。徐庶は劉備への心が棄てきれずに、蜀に帰ったという設定。

蜀ファンは、徐庶の活躍を期待させられる。だが徐庶は、一度も登場しない。ただ麻薬医として、名前が覗くだけだ。ハンパだよ。

諸葛亮は南征して、麻薬の栽培を心得ている孟獲の心を掴んだ。南中を降したおかげで、蜀漢は麻薬大国になる。
徴発できる兵数が少ない蜀は、麻酔による治療で、傷兵を短期間で復活させた。諸葛亮の連年の北伐が可能になったのは、麻薬のおかげだ。

これと同じ地獄の話を読んだことがあります。比喩じゃなく、仏教が説く文字通りの地獄です。
鬼に身体を傷つけられても、死ぬことができない。風が吹くと傷が治るので、再び傷つく痛みを味わう。永遠に終わらないのが、この地獄の特性。
蜀の北伐に参加させられた兵は、地獄の亡者かよ。

諸葛亮は陣中で、過労を紛らわすために、麻薬を常用した。仲達は五丈原で、諸葛亮の陣から麻薬の臭いがしなくなったのを以て、諸葛亮が死んだと判断した。

名場面の趣きを返せ!と言いたい。


◆呉の麻薬
諸葛亮は、孫権を中毒にするために、麻薬を輸出した。
孫権の晩年は、海外に人買いしたり、呂壱を寵用したり、二宮の変を起こしたり、判断が狂ってばかりだ。これらは全て、諸葛亮に贈られた麻薬を楽しみすぎたせいだと。

三国のメインキャラは、こうして塚本氏により、次々と麻薬に染まっていくのでした。こんな三国志、果たして面白いんだろうか。

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